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前立腺がんについて

 
◆目次◆

1 前立腺がんとは
2 前立腺がんの疫学(どんな人がかかりやすいのか)
 2.1 年々増加している前立腺がん
 2.2 前立腺がんが増えている理由
3 前立腺がんの症状
4 前立腺がんの検査
 4.1 PSA検査
 4.2 エコー超音波検査
 4.3 尿検査
 4.4 CT検査
 4.5 MRI検査
 4.6 針生検
5 前立腺がんの治療
 5.1 PSA監視療法
 5.2 ホルモン治療
 5.3 放射線治療
 5.4 小線源治療
 5.5 手術療法
  5.5.1 開腹手術 
  5.5.2 腹腔鏡手術
  5.5.3 ロボット支援下手術
6 前立腺がんの治療方針の決定
 6.1 前立腺内に留まる癌でPSAが10以下の場合
 6.2 前立腺外に癌が広がり、PSAが10以上の場合
7 前立腺がんかも(PSAが高い)と言われたら
8 診療費用

1. 前立腺がんとは

みなさんは前立腺がんと聞いてどのようなことを想像するでしょうか?すぐに死に至らない癌である、ゆっくりと進行する癌である、最近増えてきている、高齢の男性が罹りやすい、PSAが関係している、など主にこのようなことを想像すると思います。

事実、近年非常に増えてきておりお亡くなりになる方も多くなってきているのが現状です。このページでは前立腺がんについて詳しく解説していきます。

2. 前立腺がんの疫学 (どんな人がかかりやすいのか)

50歳以上になると前立腺がんになる患者様が現れてきます。60歳以上の方が主に前立腺がんにかかってます。年齢を増せば増すほど前立腺がんの割合は増えます。50歳以下で前立腺がんがある患者様はほとんどみられません。

死んだ方の解剖をした時に、3人に1人が前立腺がんがあったというデータがでています。この方達は前立腺がんだと診断されずに亡くなっています。なので前立腺がんは患っても亡くなるまで癌であることに気付かない可能性が高い癌であるということです。80歳以上の半数は前立腺がんになっているのではないかとも言われています。

2.1 年々増加している前立腺がん

前立腺がんは年々増加していて2020年では日本人男性がかかるがんでの罹患率(かかっている方の割合は)は2位なのですが、2025年には罹患率1位になると予測されています。一方前立腺がんは癌での死亡率は6位です。罹患率の割にはあまり死亡しないということが言えます。つまり先述の通り、前立腺がんは罹っても死に必ずしも直結するわけではないということがいえますね。

2.2 前立腺がんが増えている理由

前立腺がんにかかる患者様の数が増加している原因として日本人の高齢化、食生活の欧米化があげられます。動物性脂肪を多く摂ることが前立腺がんの発症につながるリスクがあるのではないかと言われています。アメリカでは現在前立腺がんが男性の癌の中で罹患率1位、死亡率2位となっています。食の欧米化によってかかる病気も欧米化しているということが言えます。

3. 前立腺がんの症状

基本的に前立腺がんの初期は無症状です。図のように、前立腺肥大症ですと尿道を構成している内腺が肥大化してくるので排尿時の痛みや頻尿などの排尿障害・蓄尿障害が出てきますが、前立腺がんというのは前立腺の外腺から発生してくるので尿道にはほとんど影響を与えません。前立腺の外腺は尿道に接していないので癌ができていても血尿などは出てこないのです。逆に前立腺がんによって血尿や排尿障害が出てくると前立腺がんが非常に進行しているという状態です。前立腺がんが進行してくると膀胱にも浸潤し血尿、排尿時痛、頻尿、尿の勢いが悪い、などといった症状も出てきます。また前立腺がんは腰の骨に転移しやすいので腰の痛みとなって現れてくることもあります。

つまり、前立腺がんの初期(早期)は無症状で、進行してきてはじめて症状が出てくるのです。なので進行する前に事前に発見しておきたいですよね。

4. 前立腺がんの検査

4.1 PSA検査

一番大事なのはPSA検査です。PSA検査というのはPSAのページで詳しく書いてありますが、PSAというのは前立腺特異抗原といって前立腺の中の特有な物質です。癌細胞は正常の細胞を食い破って、血液中に漏れ出していきます。そのためPSAの値が高くなってしまうのです。血液中のPSAの濃度が4ng/ml以上であると前立腺がんを疑うことになります。PSAは基本的に健康診断のオプションで測る検査です。健康診断で必須なものではないので50歳以上の方はしたほうがいいでしょう。また、親族に前立腺がんの方がいた場合は40歳以上から検査した方がいいと言われています。具体的な数値の目安や年齢の目安、何年に一回やったらいいかの目安は下の図のようになっています。PSAを測ったことのない方は検診などで検査すると良いでしょう。

年齢
50~64 65~69 70~
基準値
3.0ng/mL
以下
3.5ng/mL
以下
4.0ng/mL
以下
PSA値
P1.0ng/mL
以下
3年に1度
検査
3年に1度
検査
3年に1度
検査
1.1ng/mL
~基準値
1年に1度
検査
1年に1度
検査
1年に1度
検査
基準値
以上
専門医受診 専門医受診 専門医受診

4.2 エコー(超音波検査)

前立腺の大きさなどを確認します。前立腺が大きいと癌でなくともPSAの数値は高くなりますので、エコーで前立腺の大きさを確認しPSAの値と照らし合わせます。エコーで前立腺の形状を確認し、癌の有無を確認する場合もあります。

4.3 尿検査

前立腺がんが進行している場合は尿に血液が混じることもありますが、基本的には前立腺がんに対しては尿検査は必須な検査ではありません。初診時は、前立腺がんによる症状かどうかわかりません。また他の異常(感染など)があるかを調べるために泌尿器科では尿検査をすることが多いです。

4.4 CT検査

前立腺がんとわかった場合CT検査をして、リンパ節や肺に転移していないか、他の箇所に転移がないかを調べます。前立腺がんがあった時には癌のステージ、癌の進行状況を決める重要な検査であります。3分から4分程度で終わり放射線を使って撮影します。

4.5 MRI検査

前立腺がんが前立腺の中でどこまで進行しているのか、外に飛び出ているのか中にとどまっているのか、片側だけでなく反対側にまで及んでいるのか、精嚢にまで及んでいるのかなど具体的に確認するのに必要な検査となります。検査時間は30分程度で磁気を使って撮影します。

前立腺がん 画像例

4.6 針生検

MRIで前立腺がんを疑ったら針生検をします。肛門から超音波の機械を入れて直腸の壁を介して前立腺に針を通します。超音波で前立腺を見ながら針を12針刺し、その中にがん細胞がないかを調べます。がん細胞がなければ癌の疑いはありませんが、がん細胞があった場合は顕微鏡でがん細胞の悪性度を確認します。

前立腺がんのステージ(癌の段階、初期なのか進行した状態なのか)をMRI画像、CT画像、PSA数値、針生検の悪性度によって決定し今後の治療を決定します。

5. 前立腺がんの治療

5.1 PSA監視療法

PSA監視療法は他の癌には見られない前立腺がんに特徴的な治療です。前立腺がんが長生きする癌と言われる理由でもあります。このPSA監視療法は実際に何か治療するのではなく、PSA値をただ監視し続けます。PSAの値が前立腺がんの進行度合いを反映しているからです。なのでPSAの値が不変であればその前立腺がんは増殖・進行していないと判断します。3ヶ月に1回の採血でPSAの上昇がないかを確認し、上昇していなければ身体に悪影響がある癌ではないと判断し、積極的な治療はしません。またPSAが上昇し続けた場合には針生検などをして治療に移行します。

5.2 ホルモン治療(内分泌療法)

このホルモン治療も前立腺がんに特徴的な治療法です。前立腺がんは男性ホルモンに依存して成長しているため男性ホルモンを薬で抑えることで癌の進行を抑える治療です。癌の進行が抑えられるとPSAの数値も下がります。ホルモン投与後PSAの数値で癌の状態を把握します。治療している最中にPSA値が上昇することがあればそのホルモン薬の効果が効かなくなったと判断しホルモン薬を変更します。ホルモン治療は放射線治療や手術療法の補助として、併用して用いることがあります。また、手術が難しい80歳以上の高齢者の方にはホルモン治療単体で用いられることがあります。

ホルモン治療自体は根治治療ではありません。前立腺がんを除去するのではなく、抑えるといったイメージです。実際のホルモン治療はPSAの値をかなり低下させ、前立腺がんに対してはかなり効果があります。

5.3 放射線治療

放射線を前立腺にあてることで癌細胞を殺す治療です。今までの放射線治療は正常な細胞も破壊してしまうため勃起障害、膀胱直腸障害、皮膚障害などの副作用が起こってしまいました。最近では放射線治療の精度も上がってきたため前立腺の周囲の臓器に放射線を多く当てることなく治療することが可能になってきてます。またかなり高額にはなりますが、先進医療の重粒子線治療は正常の細胞にはダメージを与えず癌細胞にのみ攻撃をします。重粒子線治療はより効果が高く副作用も少なく済みます。

5.4 小線源治療

放射性物質を前立腺の中に埋め込んで前立腺の中から放射線を出して癌を殺す治療です。これはステージが進んだ悪性度が高い癌には適用しません。

5.5 手術療法

手術療法には主に開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援下手術があります。それぞれの特徴を説明していきます。全ての手術治療の合併症に尿失禁と勃起障害があります。

5.5.1 開腹手術

2010年頃まではこの手術が行われてきました。下腹部を10cmほど切開して行います。出血量が多い、傷が大きい、術後の回復に時間がかかるといった特徴があります。また術後の合併症の尿失禁が発生する割合が高いと言われています。出血量は多い人で3リットル前後の出血をしてしまいます。泌尿器科の手術の特徴として、男性の骨盤は狭く前立腺は骨盤の中にあるため開腹手術だと手術操作が難しく出血すると視野が狭くなってしまいます。開腹手術は10年以上昔の治療で最近では以下の腹腔鏡手術やロボット支援下手術が主流となっています。狭い骨盤の中でも腹腔鏡やロボットなどの鉗子やカメラを使用することで自由な手術操作が可能となるのです。

5.5.2 腹腔鏡手術

開腹手術に比べて出血量も少なくすみます。お腹の中に二酸化炭素の空気圧をかけその圧力で出血を止めるので出血量が100cc下になります。術後の回復も早く、尿失禁の合併症も少なく済みます。この手術は医師の技術力が必要で習得するのに時間がかかる手術です。

5.5.3 ロボット支援下手術

新しい保険適用の手術です。腹腔鏡手術と同様に出血量を抑えることができ術後の回復も早く、尿失禁などの合併症も少なくすみます。腹腔鏡手術に比べて術者が技術を比較的簡単にマスターできます。特徴としましては術者が別の場所で画像を見ながら手術します。ビデオ画像さえ見られれば海外でもどこでも遠隔でできる手術です。

6. 前立腺がんの治療方針の決定

大雑把に分けると「前立腺内に留まる癌でPSAが10以下の場合」と「前立腺外に癌が広がり、PSAが10以上の場合」の二つに分けられます。

6.1 前立腺内に留まる癌でPSAが10以下の場合

年齢が80歳以上であればホルモン治療やPSA監視療法が適用になります。逆に年齢が若いと手術療法、放射線療法を行うことになります。これらはかなり大雑把でありもちろん治療の決定には必ず専門医の判断が必要になります。

6.2 前立腺外に癌が広がり、PSAが10以上の場合

前立腺がんが外に広がっている場合は放射線治療や手術をしても取りきれないため放射線や手術治療は適しません。癌細胞は1つでも体内に残ってしまうと意味がないのです。なので手術治療や放射線で癌を殺せないと判断した場合はホルモン治療が適用されます。

7. 前立腺がんかも(PSAが高い)と言われたら

泌尿器科へ受診をして超音波、採血などの検査をし泌尿器科専門医のいる病院・クリニックで適切な指示を受けましょう。もしPSA高値を指摘されたり泌尿器のことで気になることがあればお気軽に当院泌尿器科医師までご相談ください。

8 診療費用

当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、およそ下記のようになります。(3割負担です)

尿検査のみ 2000円前後
エコー検査のみ 2500円前後
採血+尿検査 3500円前後
採血+尿検査+エコー検査 5000円前後

当院は泌尿器科専門の保険診療を行ってるクリニックであり、プライバシー管理と感染予防対策を徹底しております。
老若男女気軽に受診出来る環境を整えております。
泌尿器科疾患でお悩みの方は是非お気軽に東京泌尿器科クリニックまでご受診下さい。

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の外来診察を行なう。
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。

上野院

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