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男性更年期障害(やる気が出ない、イライラする、性欲の低下)

女性の更年期障害はみなさんご存知だとは思いますが、男性にも同じように男性更年期障害というものがあります。あまりお聞きにならない言葉だとは思いますが最近徐々に認知度が高まってきました。

やる気がでない、怒りっぽい、性欲の低下、勃起不全、物忘れが激しいなど実は男性更年期障害の主な症状としてあげられるもので、これらの症状で悩まれている方は非常に多くいらっしゃいます。

もしかすると男性更年期障害では?と思っている方もどこで相談すれば良いのか、どのような治療方法があるのかなど分からない方も多くいらっしゃいます。ここではなるべく難しい専門用語は使わずわかりやすく男性更年期障害について解説していきたいと思います。自分の症状が男性更年期障害かもと悩んでいる方の助けになれば幸いです。

◆目次◆

1 男性更年期障害とその症状について
 1.1 なかなか人に言えないED(勃起不全について)
2 そもそも男性ホルモン(テストステロン)とは
3 男性更年期障害の診断、検査
 3.1 質問表
 3.2 問診診察
 3.3 採血
 3.4 男性ホルモンの投与
4 男性更年期障害の治療
 4.1 男性ホルモンの投与
 4.2 漢方薬の投与
 4.3 男性ホルモンの塗り薬
5 男性ホルモンを高めるには
6 実際の症例
 6.1 44歳男性
 6.2 51歳男性
 6.3 38歳男性
7 診療費用

1 男性更年期障害とその症状について

男性更年期障害とは男性ホルモン(テストステロン)の低下によって起こる症状の総称です。多くは40代から50代にみられます。
その主な症状は、やる気が出ない、性欲が低下する、勃起不全、抑鬱症状(よくうつ)、物忘れが激しい、食欲の低下、朝起きられない、イライラする、怒りっぽい、集中力の低下、ほてり、睡眠障害などがあげられます。30代の方でも見られることもあり、70代の方でも起きることはあります。幅広い年代で起こるため、40代50代でないからといって否定は出来ません。自分で症状に気付く方ももちろんいらっしゃいますが、男性更年期障害で受診される方の多くは奥様に指摘をされて来院されるという方です。

ただし、上記に挙げたような症状は必ずしもホルモンの低下によって起こる男性更年期障害から起こるものとは限りません。例えば外的な要因であるストレスとか本当の鬱病であるとかそのような原因で同じような症状が起こることもあります。男性更年期障害なのか、その他の疾患が隠れているのかを見極めるのは非常に困難ですので、必ず泌尿器科の専門医に相談してください。

1.1 なかなか人に言えないED(勃起不全)について

男性更年期障害で様々な症状が起こるのですが、その中にED(勃起不全)を訴える方が非常に多くいらっしゃいます。しかしこの悩みは人に言いづらいことでもあるので医師に伝えることもできず、他の症状だけを問診で書いたり話したりする場合が多くみられます。潜在的に見ればこのEDの症状を一番気にされている方が多いように思います。実はED(勃起不全)の症状が、やる気がでない、抑鬱といった症状を助長させているかもしれないのです。言いづらい症状ではあるのですが、他の症状につながる要因かもしれませんし、この症状だけが先に出てきた方も更年期障害を疑うべきなのでしっかりと医師に相談しましょう。問診票などにEDと書いて頂くだけで医師はしっかり相談に乗ってくれると思います。

2 そもそも男性ホルモン(テストステロン)とは

男性ホルモン(テストステロン)には主に以下の3つの働きがあるとされています。

  1. 骨や筋肉を作り上げ強度の高い体を作り社会生活を支える。
  2. 男性としての生殖機能の維持
  3. やる気や気力につながる前向きな思考や決断力、認知機能を高める

上記のような作用が男性ホルモンにはあるのです。なので、男性ホルモン(テストステロン)が低下していくことで上記のような働きが保てなくなり男性更年期障害の症状が見られるようになるのは納得がいくことと思います。

3 男性更年期障害の診断、検査

3.1 質問表

下の表にあるようにいくつかの質問をして重症度を測ります。もしも軽度、中等度、重度に当てはまるという方は泌尿器科の受診をおすすめします。
正常の方でも症状で気になることがある場合は泌尿器科を受診しましょう。

男性更年期障害の重症度をチェックしましょう
チェック項目 なし 軽い 中等度 重い 非常に
重い
1. 総合的に調子がよろしくない 1点 2点 3点 4点 5点
2. 関節痛、筋肉痛 1点 2点 3点 4点 5点
3. 発汗 1点 2点 3点 4点 5点
4. 睡眠障害 1点 2点 3点 4点 5点
5. しばしば疲れを感じる 1点 2点 3点 4点 5点
6. いらいらすることがある 1点 2点 3点 4点 5点
7. 神経質になる 1点 2点 3点 4点 5点
8. 不安感がある 1点 2点 3点 4点 5点
9. からだの疲労や行動力の減退 1点 2点 3点 4点 5点
10. 筋力低下 1点 2点 3点 4点 5点
11. 憂鬱な気分になる 1点 2点 3点 4点 5点
12. 「絶頂期は過ぎた」と感じる 1点 2点 3点 4点 5点
13. 力尽きた、どん底にいると感じる 1点 2点 3点 4点 5点
14. ひげの伸びが遅い 1点 2点 3点 4点 5点
15. 性的能力の衰えを感じる 1点 2点 3点 4点 5点
16. 早朝勃起の回数の減少 1点 2点 3点 4点 5点
17. 性欲の低下 1点 2点 3点 4点 5点
合計
結果の見方
  • 26点以下: 正常
  • 27~36点: 軽度
  • 37~49点: 中等度
  • 50点以上: 重度

※軽度〜重度の方は受診をお勧めします。

3.2 問診診察

医師と話をしながらその症状が始まった時期やきっかけ、ストレスの有無などを確認し、男性更年期障害のような症状が起こった背景には何があるのかを詳しく探っていきます。

3.3 採血

血中遊離テストステロンの値を測ります。基本的には午前中に測ることが望ましいとされ、この数値がどれくらい低下しているのかを確認します。ただし、人により標準時の値が低い人もいれば高い人もいるため、この値が低いからといって必ずしも男性更年期障害であると診断はできません。また、採血によってその他の大きな異常はないか、前立腺のがんの値も調べます。もし前立腺のがんがある場合には男性ホルモンの投与ができなくなるので採血は今後の診療の基準となる大切な検査です。必要に応じて尿検査や超音波検査をすることもあります。

3.4 男性ホルモンの投与

採血で血中遊離テストステロンが低下している場合、男性ホルモンを投与して改善するかどうかをみます。それでも改善しない場合はその方は男性更年期障害ではないと診断でき、投与によって症状が改善すればその方は男性更年期障害であると診断できます。これは治療でありながら診断でもある診断的治療とよばれます。

男性更年期障害を疑う様々な症状が男性ホルモンの減少によって起きているのか、外的要因から起きているのか、メンタル的な原因から起きているのかというのを判断するためにも男性ホルモン注射を打つことでほぼ判明します。男性ホルモンの投与で改善されなければ他の要因を探さなければならないですし、これで改善すれば男性更年期障害の治療に集中することができます。

4 男性更年期障害の治療

4.1 男性ホルモンの投与

先述の通り男性ホルモン(テストステロン)の注射を行っております。当院では保険適用範囲での治療として2週間に1回の頻度で通院してもらっています。

4.2 漢方薬の投与

漢方薬を毎日内服することで男性更年期障害に有効であるとされています。当院でも保険診療で行っています。漢方薬投与だけの患者さんはあまりおられず、定期的な注射に漢方薬の内服を追加されるという方が多くみられます。

4.3 男性ホルモンの塗り薬

こちらは日本では保険適用になっておらず、当院でも自由診療で行っております。男性ホルモンの塗り薬を毎日塗布することで皮膚を経由して男性ホルモンを吸収させます。注射は2週間に1回で1週間を過ぎると男性ホルモンの効果が薄れてくる方もいらっしゃいます。それを補助する目的でこの塗り薬を併用してもらっています。値段は1本3500円となっており、大体の目安としては毎日塗ったとして2-4週間程使用できます。

定期的なウォーキング、ジョギング運動を取り入れてしっかりと生活のバランスを整えることが大切です。また下半身の筋トレが有効だとされています。食生活においては、タンパク質を十分に取ることを意識し、ストレスを溜めず、良質な睡眠をとることも大切です。治療と並行してこのような規則正しい生活習慣を日頃から努力して取り入れていくことで男性ホルモンの低下を防ぐことができます。

6 実際の症例

6.1 44歳男性

最近元気がない、やる気がないと奥様から指摘され、最初はうつ病かと思ったが奥様がネットで男性更年期障害を調べて当てはまるのではないかと思い泌尿器科を受診されました。質問表では中等度の重症度で、採血では男性ホルモンの低下は見られませんでしたが、ホルモン注射で劇的に改善したため2週間に一度の注射を半年ほど続けてもらいました。半年経過後注射をやめても経過は良好です。

6.2 51歳男性

5年ほど前から勃起不全、イライラしやすい、やる気が出ない、うつなどの症状で悩み、心療内科を受診したところ男性更年期障害の疑いを指摘されて泌尿器科を受診されました。質問表で重症度の判定となっており、採血でも遊離テストステロンの値が大幅に低下していました。ホルモン注射をすることで症状はある程度改善したのですが、まだまだ本調子には至らず男性ホルモンの塗り薬の投与を併用することにしました。それから1年半経過した現在も使用を継続していますが、経過は良好で生活にも支障をきたしておりません。

6.3 38歳男性

ED(勃起不全)で奥様と一緒に来院されました。質問表では中等度の重症度、採血で男性ホルモンの低下は見られなかったのですがホルモン注射でED(勃起不全)はやや改善しました。その後排尿障害、頻尿もみられたためPDE5阻害薬(排尿障害改善薬)を併用したところED(勃起不全)についてもだいぶ改善されました。半年後に注射もPDE5阻害薬も中止しましたが問題なく経過は良好です。

7 診療費用

当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、およそ下記のようになります。(3割負担です)

尿検査のみ 2000円前後
エコー検査のみ 2500円前後
採血+尿検査 3500円前後
採血+尿検査+エコー検査 5000円前後
男性ホルモン注射のみ 1000〜1500円前後

当院は泌尿器科専門の保険診療を行ってるクリニックであり、プライバシー管理と感染予防対策を徹底しております。
老若男女気軽に受診出来る環境を整えております。
泌尿器科疾患でお悩みの方は是非お気軽に東京泌尿器科クリニックまでご受診下さい。

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の外来診察を行なう。
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。

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