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新型コロナウイルスと変異株について(免疫、抗体の視点から)

[2021.04.19]

新型コロナウイルス(COVID-19)と変異株について(免疫、抗体の視点から)

新型コロナウィルス(COVID-19)の第4波の到来と言われ、2021年4月19日現在において新型コロナウィルスは猛威を振るっています。現在の第4波は変異株ということが注目されていて、私自身診療中に新型コロナウィルス(COVID-19)の変異株について患者様から質問されることも多くなりました。私の専門は泌尿器科であり本来の専門ではないのですが、新型コロナウィルス(COVID-19)の変異株について最新の文献と論文を調べて考察しましたのでここで皆さんに説明できたらなと思います。

◆目次◆

1 新型コロナウイルス感染の現状
2 変異とはどうして起きるのか
3 現状の変異株について
4 新型コロナウイルスへの免疫反応
 4.1 抗体が新型コロナウィルスをやっつける
 4.2 自然免疫が新型コロナウィルスをやっつける
 4.3 BCGの話
5 Natureからの変異株についての論文
 5.1 治療目的で回復者血漿を使用
 5.2 抗体から逃れ、変異したウイルスが出現
 5.3 回復者血漿の使い方について
6 予防接種(ワクチン)について
7 今後我々がすべきこと

1 新型コロナウイルス感染の現状

2019年末から中国の武漢で発生した新型コロナウィルス(COVID-19)が世界中で猛威を振るっており、2020年の東京オリンピックも延期となりました。日本国内でも緊急事態宣言が2度発令され、現在は蔓延防止等重点措置が発令されています。第3波は寒冷によってウィルスが蔓延したことがあげられますが、第4波は変異株が原因で3度目の緊急事態宣言が発令されるかもしれません。今現在では英国株、南アフリカ株という変異株が話題に上がっていますが、変異株はなぜ感染力が高くなるのか、また広がりやすくなるのか、変異株というものはなぜ起きるのかということをここで説明していきたいと思います。

2 変異とはどうして起きるのか

我々の体を作っている遺伝子はアミノ酸で構成される2本の鎖からなるDNAです。新型コロナウィルス(COVID-19)はRNAウィルスと言われていて、遺伝子は1本のアミノ酸の鎖からできたRNAです。つまり人間の遺伝子は2本の鎖のDNA、新型コロナウィルス(COVID-19)の遺伝子は1本の鎖のRNAということです。
この1本の鎖でできたRNAウィルスは増殖をする時にもう一回同じRNAウィルスをつくり出そうとするのですが、2本の鎖と比べて1本の鎖の場合はとてもミスが起きやすいのです。新しく作り出そうとする過程でさまざまなミスが起こります。全く同じ遺伝子が出来上がらないのです。ミスの回数も1日に20回とも、2週間に1回とも言われておりまだ正しい情報はわかっていないのですが、かなりの高確率で増殖時にミスが起こります。
このミスを変異と呼び、出来上がったウイルスを変異株と呼ぶのです。
ウイルスが変異で形を変えていく過程で感染力が強いものになったり、抗体が効かないものになったりするのです。もちろん感染力が弱く、抗体にもよく効く形に変異するものもあるのですが、そういうものは人間の体の中で消滅して人間界で広がらないために残りません。感染力が強く、抗体にも強く変異したウィルスがこの世の中で生き残っていくので感染が広がっていってしまうのです。普通に考えて、淘汰されて生き残っていくのは感染力が強く、人間の抗体にもやっつけられにくいウイルスになりますよね。
増殖の過程で必ずミスが生じることがあり、ウイルスは変異するので、変異株というものはウィルスが増殖していく過程においては避けられないのです。そもそも新型コロナウィルス(COVID-19)は変異しやすいウィルスなのかという疑問に関しては、最新の論文では変異しにくい方だと言われています。ですがこれだけ長期間にわたって感染が続くと新型コロナウィルス(COVID-19)の変異株が次々と現れてしまうことは致し方がないことなのです。

3 現状の変異株について

現状における感染拡大の一番の原因と考えらえているのは、感染力の強い英国株だと言われています。その他南アフリカ株やブラジル株は抗体が効きにくいというデータがあります。
また、フランスで報告されたブルターニュ変異株は従来のPCR検査をすり抜けてしまうようですが、感染力が低く重症化しにくいもので懸念される状況ではないと報告されています。人々が大陸間を往来することで他国の変異株が大陸をまたぐことになります。

4 新型コロナウイルスへの免疫反応

免疫反応というのは、体内に外部からウィルスや毒素などの異物が侵入した時にやっつける反応のことです。免疫には人間にもともと備わっている自然免疫と、特定の病原菌に感染して抗体を作って対抗する獲得免疫に分けられます。

4.1 抗体(獲得免疫)が新型コロナウィルス(COVID-19)をやっつける

新型コロナウィルス(COVID-19)では2020年の中頃に、「一度かかって抗体があるから大丈夫」「抗体検査」など「抗体」というものに注目が集まりました。抗体は前述したように獲得免疫であるため、一度罹ると再び侵入してきた際にウィルスをやっつける、もしくは軽症で済むと言われています。そもそも日本人は新型コロナウィルス(COVID-19)に対しての抗体が作られにくいと言われており、事実アメリカでは新型コロナウィルス(COVID-19)の抗体検査の結果、抗体を持っている人が15%なのに対して、日本ではわずか1%足らずと低いのです。考えられる要因としては以下のことが考えられます。

4.2 抗体以外の自然免疫が新型コロナウィルス(COVID-19)をやっつける

抗体のように体内に入ってから作られる獲得細胞だけでなく、T細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞、マクロファージと呼ばれているもともと人間の体に存在している自然免疫があります。この自然免疫が体内に新型コロナウィルス(COVID-19)が入ってきた時にやっつけてしまうのです。この場合は抗体が作られる前にやっつけてしまうので軽症か無症状で済みます。日本人が新型コロナウィルス(COVID-19)に感染しても軽症で済む人が多いのは、自然免疫力が強いからではないかと最近の論文では言われています。では何故日本人は自然免疫が強いのでしょうか。
去年下記のBCGの説がよく言われておりました。

4.3 BCGの話

BCGは結核を予防するワクチンで結核菌です。日本ではハンコ注射として幼い頃の接種が義務付けられています。BCG接種を義務付けている国は少ないのですが、義務付けている国といない国とでは、新型コロナウィルスの感染者数、死亡者数に明確な差があり、接種している国の感染者数、死亡者数が圧倒的に少ないのです。2020年4月に私が書いた記事がありますので詳しくはそちらをご参照下さい
BCGは結核菌であって新型コロナウィルス(COVID-19)とは関係ないのですが、小さい時に体内に結核菌を取り入れたことで自然免疫が活性化されて自然免疫が強くなります。新型コロナウィルス(COVID-19)が感染しても重症化しないのはそのためではないかと言われています。そして、自然免疫が新型コロナウィルス(COVID-19)をやっつけてしまうために感染しても抗体が作られないのではないかと言われております。
事実泌尿器科診療の中で、膀胱癌の患者様の術後にBCGを膀胱の中に注入します。膀胱の中に入れることで膀胱の中のBCGが免疫を活性化させてがんの再発を防ぐのです。がんも免疫が弱っているとできやすいのでBCGで自然免疫を活性化させることでがんを再発させにくくするのです。BCGの膀胱内注入はデータでも癌の再発予防に効果が証明されています。このことからも普段からBCGを使っている我々泌尿器科医にとってはBCGによって自然免疫が獲得されて新型コロナウィルス(COVID-19)に対抗できたということは納得のいく話ではあるのです。

5 2021年2月に発表されたNatureからの変異株についての論文

2021年2月にNatureから発表された論文でウィルスの変異株に関して非常に興味深い記事がありましたので以下で紹介します。

5.1 悪性リンパ腫の患者さんに治療目的で回復者血漿を使用

回復者血漿(かいふくしゃけっしよう)とは新型コロナウィルス(COVID-19)に感染したのち、回復した人の血漿のことを言います。回復した人の血漿には特定の新型コロナウィルス(COVID-19)に対する抗体が含まれているため、その血漿を同じ新型コロナウィルス(COVID-19)に感染した人に投与して治療する方法を回復者血漿治療と言います。回復者血漿治療は新型コロナウィルス(COVID-19)の治療法としてアメリカなどでは承認されている治療法です。
悪性リンパ腫に侵されているある患者様が新型コロナウィルス(COVID-19)に感染してしまいました。悪性リンパ腫は血液のがんなので、その患者さんは抗がん剤を使用していました。最初は抗ウィルス薬を使っていたのですが、抗がん剤を使っているので免疫が抑制され、外敵をやっつける免疫力が低下していたため、抗ウィルス薬の効果がなく、回復者血漿治療を行いました。

5.2 抗体から逃れるように変異したウイルスが出現

回復者血漿を入れたことによって、体内には新型コロナウィルス(COVID-19)の抗体がある状態ではあったのですが、その患者さんは免疫力が著しく衰えていたために、抗体で完全にやっつけることも出来ず体内でウィルスが生き続けてしまったのです。そしてウィルスが増殖をする過程において抗体から逃れるように変異した抗体に負けない新型コロナウィルス(COVID-19)の変異株が出来上がってしまいました。そしてその変異株が体内で増殖し、残念ながらその患者さんは亡くなってしまいました。

5.3 回復者血漿の使い方について

上記の事例から、たとえ回復者血漿で体内に抗体が存在したとしても、免疫力が低下している体内ではウィルスが増殖しやすい環境になってしまうので、次第に抗体に打ち勝つ強力な変異ウイルスが出現する危険性があるのです。回復者血漿というのは免疫力の弱っている人には使わないようにとの警告がされるようになりました。

6 予防接種(ワクチン)について

予防接種は十分な抗体量を入れないと意味がありません。2回と決められているならきちんと2回接種するようにしましょう。不十分な抗体の量では効果が期待できないばかりでなく、ウィルスがダラダラと体内に滞留することにもなります。しっかりと決められた回数の接種をすることが大切です。

7 今後我々がすべきこと

正直、今後もどのような変異ウイルス・変異株が出現するかもわかりません。予防接種が効かない変異株が出現したとしても全然不思議ではありません。それでも今ある予防接種は有効性が高いので打つ方が良いと思います。また、その新型コロナウィルス(COVID-19)の予防接種は私たちの自然免疫を活性化させる点でも効果があると思います。
私伊勢呂の元にも4月19日現在ワクチンが回ってきていない状態であります。まだ一般の人たちが接種できるまでに時間がかかるかもしれません。
今、何よりも大切なのは標準予防策、手指衛生、マスク、フェイスシールド装備などに関してはウィルスが変異したとて変わらないのでそこをしっかりと対策して、自分が移らない、人に移さないように心がけることが大事なのではないでしょうか。また規則正しい健康的な生活をすることで、自分の免疫力を高めていきましょう。

待合室

今後も大宮エヴァグリーンクリニックと東京泌尿器科クリニックのホームページのコラムで皆様が興味ある情報を最新の論文や文献から情報を得て提供していきます。今後も読んで頂けたら幸いです。

医療法人 大宮エヴァグリーンクリニック
東京泌尿器科クリニック上野

理事長 医師 伊勢呂哲也

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