膀胱炎について
膀胱炎と聞くとどのような状態を思い浮かべるでしょうか?
おしっこをするときに痛い、おしっこを我慢するとなる、水分摂取を怠るとなる、女性がかかりやすい、スチュワーデスさんに多いなど主にこのようなことを思い浮かべる方が多いと思います。
実は一概に膀胱炎といっても様々な種類があり一括りにまとめることはできません。
この記事ではなるべく専門用語を使わず、様々な種類の膀胱炎についてそれぞれ詳しく書いていきます。膀胱炎で悩む皆様の参考になれば幸いです。
◆目次◆
1 膀胱炎とは
2 膀胱炎の検査
2.1 尿検査
2.2 採血検査
2.3 超音波検査(エコー検査)
2.4 膀胱鏡検査
3 膀胱炎の種類とその治療
3.1 急性膀胱炎
3.1.1 急性膀胱炎とは
3.1.2 急性膀胱炎の治療
3.2 再発性膀胱炎(膀胱炎を繰り返す)
3.2.1 再発性膀胱炎とは
3.2.2 再発性膀胱炎の治療
3.3 複雑性膀胱炎とは
3.3.1 複雑性膀胱炎の治療
3.4 間質性膀胱炎
3.4.1 間質性膀胱炎とは
3.4.2 間質性膀胱炎の治療
3.5 放射線性膀胱炎
3.5.1 放射線膀胱炎とは
3.5.2 放射線膀胱炎の治療
4 診察費用
1 膀胱炎とは
炎症というのは、体内に侵入した異物に対して白血球がそれを退治しようと戦うことで起きるものですが、その炎症が膀胱の中で起きていることを膀胱炎と呼びます。
膀胱炎の症状で代表的なものは、排尿時痛(おしっこするときの痛み)、頻尿(おしっこの回数が多くなる)、残尿感(おしっこの後に残った感じがある)などです。血尿を伴うこともあります。
膀胱炎では発熱は基本的に起こりません。発熱を伴い膀胱炎のような症状がある場合は腎盂腎炎を疑います。
膀胱炎の種類は、膀胱に細菌が感染することで炎症が起こる急性膀胱炎、自分の体の中で自己の物質に対して原因不明の炎症が起こる間質性膀胱炎、放射線を浴びることで膀胱が傷つき炎症を起こす放射性膀胱炎などがあります。
一般的には最初の急性膀胱炎といわれるものを膀胱炎と呼んでいますが、急性膀胱炎だと思っていても稀にその他の膀胱炎であることもありますので注意が必要です。これらの種類については後述にて詳しく説明していきます。
2 膀胱炎の検査
2.1 尿検査
尿検査は泌尿器科では非常に大切な検査となります。尿の中に白血球、赤血球がないか、細菌が入っていないか、またどんな細菌に感染しているのか確認をします。
2.2 採血検査
一般的な膀胱炎では採血は行いませんが、炎症状態が大きかったり出血をしていて貧血を疑うような場合には採血を行う場合もあります。
また、膀胱炎のような症状に発熱を伴う時には腎盂腎炎を疑い採血をする場合もあります。
2.3 超音波(エコー)検査
膀胱炎のような症状(排尿時痛、頻尿、残尿感など)は、尿管結石や膀胱癌でも起きることがあります。そのような可能性がないか確認をするために超音波検査を行い、明らかな尿管結石や膀胱癌が見られなければ膀胱炎として治療をすることになります。
超音波検査はゼリーを体に当てて体内を検査する痛みを伴わない体に優しい検査です。超音波検査は細かい異常を見つけるのには向いていないのですが、大きい結石やがんの可能性を除外するために非常に適した検査と言えます。
2.4 膀胱鏡検査
尿道からカメラを挿入し膀胱の表面を直接カメラで見ることで炎症が起きているか、どのような炎症なのかなど超音波では見えない膀胱の表面に起こっている異常を確認することができます。
当院ではゼリーによる麻酔を使用して行っております。最新の柔らかい軟性膀胱鏡を用いているため身体への負担はだいぶ軽減されております。膀胱癌や膀胱結石の診断にも軟性膀胱鏡は必須の検査になります。
3 膀胱炎の種類とその治療
3.1 急性膀胱炎
3.1.1 急性膀胱炎とは
急性膀胱炎が一般的な膀胱炎と呼ばれるものです。
急性とは急に症状が起こることで、じわじわではなくある時点から急に症状が出始めるという意味です。
急性膀胱炎は若い女性に多く、トイレを我慢したり水分不足から起こります。我慢をしたり水分不足で尿の量が少なくなると、膀胱内に入った細菌が留まり繁殖しやすくなるためです。
また、性行為後に起こることが多いとされています。これは性行為の際に体外から細菌が膀胱内に入りやすくなるためです。
急性膀胱炎は出血を伴うこともありますがその場合は急性出血性膀胱炎という病名になります。どちらも治療に変わりはありません。
男性は尿道が長いために細菌が入りづらく膀胱炎にはあまりならないといわれています。
急性膀胱炎は放っておくと腎盂腎炎(じんうじんえん)に発展することがあります。
腎盂腎炎は非常に重い病気ですので入院が必要になることもしばしばあります。膀胱炎の症状に気づいた場合は早めの治療が必要です。
3.1.2 急性膀胱炎の治療
抗生剤の投与となります。抗生剤を3日〜5日ほど内服してもらいます。ほとんどの場合が抗生剤の投与のみで良くなります。
泌尿器科の先生によっては漢方薬を処方する先生もいらっしゃいます。
急性膀胱炎の再発予防は水分をしっかりと摂取すること、陰部を清潔に保ちおしっこを我慢しないこと、性行為の前後でシャワーを浴びておしっこをすることが大切です。
3.2 再発性膀胱炎(膀胱炎を繰り返す)
3.2.1 再発性膀胱炎とは
先に述べた、急性膀胱炎を何度も繰り返すことを再発性膀胱炎とよびます。人によっては年に5.6回繰り返す人もいます。
そのような方は超音波検査や尿検査をして結石や癌などがないかどうかをしっかりと確かめた上で必要であれば膀胱鏡検査も行います。
3.2.2 再発性膀胱炎の治療
膀胱炎の症状がある場合は抗生剤の投与をします。膀胱炎はよく『クセになる』ともいわれるのですが、癖になるというのは水分量の摂取や排尿の我慢などの生活習慣を変えなければ繰り返し発症してしまうということです。
再発予防のために生活習慣をいくら改善しても治らない方もいらっしゃいます。そのような方には漢方薬の投与を継続的に行い、体質改善を図ります。
漢方薬を3か月〜半年ほど毎日服用することで繰り返して苦しんでいた膀胱炎にならなくなった方も大勢いらっしゃいます。
3.3 複雑性膀胱炎とは
免疫力の低下など何かしらの体の異常があって膀胱炎になることがあります。
また、体内に結石や腫瘍や体外からの異物がありそこに細菌がくっつきやすくなって膀胱炎になってしまうこともあります。このように何か原因があってなってしまう膀胱炎を複雑性膀胱炎と言います。それに対し急性膀胱炎は単純性膀胱炎と言われます。
3.3.1 複雑性膀胱炎の治療
原因となる異物や結石や腫瘍を取り除く治療と同時に、抗生剤の投与も行なっていきます。免疫力の低下がある場合はその原因を探り大元の病気の治療を優先して行います。
3.4 間質性膀胱炎
3.4.1 間質性膀胱炎とは
膀胱上皮の壁の中に原因不明の炎症が起きます。これは細菌感染によるものではありません。
膀胱の壁の中で炎症が起こるために痛みを生じ、おしっこを貯められなくなるなど急性膀胱炎と同じような症状が起きます。特徴としては膀胱の壁の中で炎症がたくさん起こっているため膀胱が拡張しづらくなり(拡張することで痛みがでるため)膀胱の中に尿が貯められない状態になっています。
普段なら200〜300㏄貯められるのが100㏄以下しか貯められません。膀胱の壁が膨らむことで傷ついて痛みとともにさみだれ状の出血を起こします。
尿の中に白血球は出てきますが細菌が出てくることはほとんどないため急性膀胱炎の尿検査とは区別出来ます。またハンナー潰瘍という膀胱鏡での所見が特徴的です。
3.4.2 間質性膀胱炎の治療
水圧拡張術といって膀胱のなかに水をたくさん注入し膀胱を膨らませあえて膀胱壁から出血させて膀胱の壁を広げるというのが保険適用で主流の治療です。内服薬では抗うつ薬や抗アレルギー薬剤も使われます。
ここ最近では間質性膀胱炎に対して保険適用のある内服薬ができました。
基本的に細菌が原因ではないので抗生剤は使用いたしません。こちらの病気は悩んでいる方が非常に多くいらっしゃいます。
少しでも異常を感じましたら泌尿器科専門医のもと適切な治療を受ける必要があります。
3.5 放射線性膀胱炎
3.5.1 放射線性膀胱炎とは
前立腺癌や直腸癌など膀胱の周囲にがんがあり、そのがんに対して放射線治療をした場合にその放射線が膀胱にも影響を与えてしまうことがあります。
放射線が膀胱を攻撃し炎症を起こして出血したり頻尿や排尿時痛などの症状を引き起こします。これは超音波検査などではわからないのですが膀胱鏡検査で見ると一目瞭然にわかります。
膀胱鏡で放射線性膀胱炎に特徴的な所見は全体的に膀胱が真っ赤になるという状態です。放射線性膀胱炎を疑った場合は膀胱鏡検査が必須となります。
3.5.2 放射線性膀胱炎の治療
ステロイド薬の内服になります。3ヶ月ほど内服して様子を見ます。再度膀胱鏡検査をして放射性膀胱炎が改善しているかどうかの確認をします。
4 診療費用
当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、およそ下記のようになります。(3割負担です)
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
膀胱鏡 | 4000円前後 |
当院は泌尿器科専門の保険診療を行ってるクリニックであり、プライバシー管理と感染予防対策を徹底しております。
老若男女気軽に受診出来る環境を整えております。
泌尿器科疾患でお悩みの方は是非お気軽に東京泌尿器科クリニックまでご受診下さい。