前立腺肥大症について(尿の勢いが悪い、尿が出ない)
前立腺肥大症と聞くとどのようなことを想像するでしょうか?おしっこが出にくくなる、おしっこの回数が多くなる、おじさんの病気であるといったようなことを思い浮かべると思います。今回は男性特有の病気、前立腺肥大症についてなるべくわかりやすく説明したいと思います。
◆目次◆
1 そもそも前立腺とは
2 前立腺肥大症について
2.1 前立腺のどこが肥大するのか
2.2 前立腺がんとの違い
2.3 前立腺肥大症の症状
2.3.1 尿の勢いがない(尿勢不良)
2.3.2 尿の回数が多い(頻尿)
2.3.3 尿が全く出なくなる(尿閉)
3 前立腺肥大症の検査
3.1 尿検査
3.2 超音波検査
3.3 採血検査
3.4 尿流量動態検査
4 前立腺肥大症の治療・予防
4.1 内服治療
4.2 手術治療
4.2.1 内視鏡的治療
4.2.2 開腹手術による前立腺肥大摘出術
5 診察費用
1 そもそも前立腺とは
図のように前立腺は尿道の一部であり前立腺液というものを作っています。前立腺液というのは精液の一部を構成しています。精液というのは精子の他に前立腺液や精嚢液というもので構成され、前立腺液や精嚢液は精子が潤滑に動くようにする役割があります。前立腺は前立腺液を作るだけの役割であり、加齢と共に前立腺肥大症や前立腺癌を発症させたりするので基本的には人体に悪いことしかしない憎たらしい臓器であると思ってよいでしょう。
2 前立腺肥大症について
2.1 前立腺のどこが肥大するのか
図のように尿道を構成している前立腺の内腺と呼ばれる部分が肥大します。前立腺の内腺が大きくなることで尿道を圧迫して尿が出にくくなったりします。外腺は基本的には肥大しません。
2.2 前立腺がんとの違い
前立腺がんは図のように外腺から発生します。外腺から発生するため、直接尿道とは接しておらず尿道を圧迫しません。そのため排尿障害や頻尿などの尿道が圧迫されて起こる症状は初期の前立腺がんではほとんど出ません。ただし前立腺がんでもあまりにも癌が大きくなってくると癌が尿道を圧迫し、排尿障害や頻尿などの症状が出てくることもあります。
2.3 前立腺肥大症の症状
2.3.1 尿の勢いがない(尿勢不良)
前述通り前立腺肥大で尿道が圧迫されると、尿の勢いがなくなり尿の出が悪くなります。これは前立腺肥大症の比較的初期に起こる症状です。最近尿の出が悪くなってきたなと感じたら前立腺肥大症の初期症状かもしれません。
2.3.2 尿の回数が多い(頻尿)
尿の勢いがなくなってくると、細くなった尿道に膀胱が一生懸命尿を通そうと頑張ってしまいます。膀胱が頑張ると膀胱の筋肉が太くなり、膀胱の神経が過敏になってくるため少量の尿が溜まってもおしっこをしたくなります。また、前立腺肥大があると物理的に前立腺が膀胱を圧迫し刺激して頻尿になるということもあります。この二つのことが起因して頻尿になってしまいます。頻尿は前立腺肥大症の初期症状ではなく、尿勢不良が出た後に起こってきます。
2.3.3 尿が全く出なくなる(尿閉)
尿道がどんどん狭くなって尿が出にくくなっている状態があまりに行き過ぎると、尿道を完全に閉じてしまって尿閉という状態になります。症状の順番としては尿勢不良→頻尿→尿閉の順番ですすんでいきます。尿閉になるのは末期の症状でまずはおしっこの出が悪くなって、頻尿になってそこでしばらく放っておくと尿閉になるということです。ですから尿閉になる前におしっこの出が悪い、頻尿など症状に気付いた時点で泌尿器科を受診することが大切です。尿閉になってしまうと、その時には膀胱の筋肉が疲弊しています。膀胱の筋肉は一度ダメになったら戻らないので尿閉になってしまうと手術をしてもお薬でも戻らなくなってしまう可能性が高いのです。尿閉になった時、通常であれば300mlほどの尿量しか溜まらない膀胱がパンパンになり、1000ml以上膀胱に溜まることも珍しくありません。尿閉になった患者様は下腹部が膨らみ非常に苦しい状態が続きます。その場合はカテーテル(尿道に入れる管のことです)を入れ尿を出してあげなければいけません。その後は内服治療の効果が出るか、手術をするまではカテーテルを入れっぱなしの状態が続きます。
尿閉の多くはもともと尿の出が悪い方で、アルコールや風邪薬を飲んだことがきっかけで起こります。アルコールや風邪薬の成分が尿道を締める作用があるためです。
3 前立腺肥大症の検査
3.1 尿検査
尿の中にバイ菌がないか、白血球がないか赤血球がないかなどを調べます。前立腺肥大症では必ずしも必要な検査ではありませんが前立腺肥大症かどうかの鑑別をするためにも泌尿器科では尿検査は必須の検査になります。
3.2 超音波検査
前立腺肥大症の大きさを測定します。また癌の有無も確認します。
超音波検査は痛みを伴わない検査です。被爆も無く患者様の身体に優しい検査です。
3.3 採血検査
採血では腎臓の機能が低下していないか、前立腺の癌かどうかPSA検査をします。進行した前立腺がんでも尿道を圧迫するので、前立腺肥大症からの症状かどうかの判別のためにも採血をします。
3.4 尿流量動態検査
尿の勢いを測ります。トイレで尿をしていただき尿の増えるスピードで尿の勢いを測ります。1秒間に何ml出るかで勢いを測定し、尿の勢いがわかることで前立腺肥大症かどうか診断することができます。当院ではこの検査を取り入れております。
当院の尿流量動態検査器と実際の結果用紙
4 前立腺肥大症の治療・予防
4.1 内服治療
前立腺肥大症の治療はまず基本的には内服治療です。尿の勢いが悪いもしくは頻尿があった場合にはまずα1ブロッカーやPDE5阻害剤という種類のお薬を内服していただきます。それでも症状が治らない場合には違うお薬を加えたり色々なお薬を調整しながら満足度を上げていきます。
前立腺肥大症があるからといって必ずお薬を内服をしなければならないのではありません。前立腺肥大症に伴っておしっこの勢いが悪い、頻尿などの排尿障害・蓄尿障害があるとその人の生活の質を落としてしまうので内服治療を勧めるのです。将来尿のトラブルにならないための予防のための内服でもあります。前立腺肥大症は50歳代以上のほとんどの男性がもっています。ですが前立腺肥大症をもつ方の全員がお薬を飲まなきゃいけないというわけではありません。毎日薬を飲むことで生活の質が落ちる方もいるので各々の前立腺肥大症による症状の大きさを考慮し、医師が内服をするかしないかの治療方針を決めます。個人的に判断するのはとても難しいことなので前立腺肥大症に伴う症状があるようならばすぐに泌尿器科専門医に相談しましょう。
4.2 手術治療
内服治療でも良くならない場合に手術治療に移行します。必ず泌尿器科専門医の判断が必要になります。内服治療をせずに手術治療に移行するということはほとんどありません。 先述した尿閉が起きた患者様には内服をせずに手術治療を行う場合があります。
4.2.1 内視鏡的治療
1番標準的な治療は内視鏡的治療です。内視鏡的治療としては尿道からカメラを入れて前立腺を切除する、あるいはレーザーで蒸散させる治療があります。内視鏡的治療の特徴は全身麻酔か腰椎麻酔で行うことにより皮膚を切除するわけではないため体へのダメージが非常に少なくて済みます。最近では手術方法も進化しているので身体へのダメージも少なく、1~2泊で帰れる場合もあります。麻酔によっては日帰りで出来るところもあるようです。前立腺肥大症に対しての内視鏡手術の合併症としては尿漏れががあります。これは術者の技術力にかかっているので術者の技術が未熟な場合には尿漏れの合併症が出てくる可能性が高くなります。
4.2.2 開腹手術による前立腺肥大摘出術
下腹部を5センチくらい切って膀胱を経由して直接前立腺を切り取ります。手術手技が難しいことと、出血量が多いことが特徴的です。これは一昔前の治療で最近では行われている施設はあまりありませんが、前立腺が非常に大きい方にはこの治療が適しています。何故なら前立腺肥大があまりにも大きいと内視鏡では手術時間がかかり過ぎて患者様への負担が大きくなるからです。開腹手術では前立腺が大きくても手術時間にほとんど差はありません。
基本的に前立腺肥大症の予防・治療や検査は泌尿器科専門医に任せた方が良いでしょう。内服薬から手術に移行するタイミングや内服薬の選択などは泌尿器科専門医が適切に行ってくれます。当院では毎日泌尿器科専門医がおります。前立腺肥大症を指摘された方や尿勢不良や頻尿などの症状を持っている方はお気軽に当院までご相談ください。
5 診療費用
当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、およそ下記のようになります。(3割負担です)
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
当院は泌尿器科専門の保険診療を行ってるクリニックであり、プライバシー管理と感染予防対策を徹底しております。
老若男女気軽に受診出来る環境を整えております。
泌尿器科疾患でお悩みの方は是非お気軽に東京泌尿器科クリニックまでご受診下さい。