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夜間頻尿が一瞬で治る生活習慣5選

[2023.08.29]

はじめに


夜間頻尿に悩んでいらっしゃる方は日本で2000万人とも言われています。夜間に何度もトイレに行くという事は、睡眠を妨げられ、睡眠の質も下がってしまい、1日の疲れが取りきれなくなってしまいます。また、夜間の暗い時間にトイレに行く事は高齢の方の場合、転倒のリスクにも繋がります。転倒から骨折や入院に繋がり、寝たきりとなってしまった方を私はたくさん見てきました。
夜間頻尿の悩みはなかなか人に分かってもらえず、お一人で悩まれている方も非常に多いのです。

そんな夜間頻尿ですが、生活習慣を変えただけで、驚くほど改善されるケースもあるのをご存知ですか。しかも、ほんの少し生活習慣を工夫するだけで良いのです。
本日は夜間頻尿に悩んでいらっしゃる方へ向けて、是非取り入れていただきたい「夜間頻尿が治る生活習慣5選」をお話ししていこうと思います。

夜間頻尿とは

はじめに夜間頻尿とは「夜間、寝てから起きるまでに1回以上トイレに起きる事」を言います。
男女を問わず、50歳以上の方の半分以上に夜間頻尿があると言われておりますので、夜間頻尿は他人の問題ではなく、誰もが抱える可能性のある症状であると言えます。

夜間頻尿が治る生活習慣

私が今まで2万人以上の頻尿、夜間頻尿の患者様を診療させていただいた経験と、「夜間頻尿ガイドライン」を参考に、夜間頻尿を改善するために取り入れていただきたい5つの生活習慣をお話ししていきます。

生活習慣① 塩分を控える

塩分を多く摂ると、喉が乾いて水分を多く摂るため、結果的に夜間の尿量も多くなってしまいます
また、塩分(NaCl)を摂ると血液中にNa(ナトリウム)が多く入ってしまいます。私たちの腎臓は過剰なNa(ナトリウム)を体の外に排出しようとするために尿量の調整をしますので、その結果、尿の量が多くなるという訳です。

横浜市立大学の泌尿器科研究チームの研究によると「低塩分食群(1日6g以下)」と「高塩分食群(1日12g以下)」に分けて、3日間夜間頻尿の回数を調査した結果、低塩分食群に夜間頻尿が少なかったという結果が出ています。

高血圧の方への食事指導において、塩分は1日6gが適量とされています。とはいえ、例えば梅干しは1粒約2g、カップラーメンは1個6~7gの塩分が含まれています。「では何を食べればいいのか」と思われるでしょう。1日の塩分量を細かく測定したり、塩分を完全にゼロにしたりすることは難しいですが、ほんの少しの工夫をしてみるという気持ちが大切です。例えば、うどんやラーメンの汁を飲まない、滅塩の調味調を使う、外食は控えるなど、できることから始めてみてはいかがでしょうか

生活習慣② 水分を控える

当たり前のことですが、夜寝る前の水分量が多い場合にはそれを控えることで、夜間頻尿は改善されます。
こちらも研究結果が出ており、「夜寝る前に水分を500cc摂取した群」と「水分を摂取しない群」とで比較した場合、「夜寝る前に水分を500cc摂取した群」の夜間頻尿の発生確率が2倍であったというものでした。

日中の水分摂取は脱水予防のために推奨されていますが、夜間頻尿のある方は、夜寝る前の水分摂取を控えることで症状の改善が見込まれます。

生活習慣③ アルコールを控える

アルコールには利尿作用があります。そのため、アルコールを多く飲む方ほど、夜間頻尿の割合が多くなります。
これは、長崎大学の研究グループが行った研究「アルコール摂取量と夜間頻尿の頻度」でも証明されています。研究では下記の表のような結果が発表されており、アルコールを飲む量に相関して夜間頻尿の回数が増加するという事が分かります。

アルコール摂取量 夜間頻尿の頻度
全く飲まない 0.47回
1~2回/週 0.64回
3~4回/週 0.81回
5回以上/週 0.91回

(長崎大学の研究グループの研究より)

夜間頻尿にお悩みの方でアルコールを普段から多く摂取しているという方はアルコールの量を減らす事で、症状の改善に繋がります

生活習慣④ カフェインを減らす

コーヒー、紅茶、緑茶などはカフェインを含んでいますが、カフェインの摂りすぎも夜間頻尿に繋がります。

イギリスのブリストル大学の研究グループが行った研究では、カフェインの摂取量と夜間頻尿の関係を調べており、「カフェインの摂取量が増加すると夜間頻尿の頻度は有意に増加する」という事が分かっています。
カフェインには利尿作用があるという事に加えて、膀胱刺激作用がありますので、少しの尿が溜まっただけでトイレに行きたくなってしまいます。
利尿作用で尿量が増え、さらに膀胱刺激作用で何回もトイレに行きたくなるということから夜間頻尿に繋がってしまうのです。

厚生労働省のホームページでは、カナダ保健省(HC)が発表している「1日あたりのカフェイン摂取量は健康な成人で400mg(マグカップで約3杯)まで」を参考として挙げています。
夜間頻尿がある方で、普段からコーヒーなどのカフェインを含むものを多く飲まれている方は、少し控えてみることで症状の改善が期待できます。

生活習慣⑤ 薬の変更

普段、服用しているお楽の中にも夜間頻尿の原因が潜んでいる場合があります。
例えば、「利尿薬」は体から余分な水分を尿として出し、心臓の負担を減らしたり、血圧を安定させたりするためのお薬です。治療のためには大切なお薬ですが、これを夜寝る前に服用している場合には夜間の尿量が多くなり、ダイレクトに夜間頻尿に繋がってしまいます。
また、高血圧の薬のうち、カルシウムブロッカーを服用している場合も夜間頻尿に繋がるというデータが出ています。具体的にはアムロジピン、ノルバスク、アダラート、コニールなどです。
これらの薬を服用中の方で夜間頻尿にお悩みの方は、主治医の先生にご相談してみてはいかがでしょうか。薬の種類を変えたり、服用方法を変えたりする事で夜間頻尿が劇的に改善される場合があります。
自己判断で中止したり、服用方法を変更したりすることは危険ですので、必ず主治医の先生にご相談ください。

まとめ

今回は夜間頻尿にお悩みの方に向け、まずは生活習慣の改善からできることをお話しさせていただきました。これらの生活習慣を取り入れる事で、皆様の夜間頻尿が少しでも改善されると嬉しいです。
しかし、夜間頻尿が尿管結石膀胱がんなどの大きな病気の症状として現れている場合もありますので、生活習慣を改善しても効果がない、どんどん症状が悪化しているなどの場合には必ずお近くの泌尿器科をご受診ください。

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の外来診察を行なう。
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。

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